[chapter:〜夢から醒めたあとに〜monologue]


物語の本を読むのが好きです。
素敵な物語。おかしな物語。不思議な物語。

そこはここにいる私の世界と違う世界。いつでも新しい世界がある。
動物達は人のように生活したり言葉を交わす。空想の動物達は空を舞う。
その世界は夢と喜びをくれる楽しい場所。

物語の扉を開くと、ちょっとだけ憂鬱に思う現実からもトリップして夢中になる。
戻る時は少し寂しいけど、
また開けば冒険の続きが待っている。

そんな物語を読みながら、星空を見上げるのが好きな時間。
どこまでも深く濃紺でキラキラと瞬く星々を、線と線で結んで表される星座達に記されたたくさんの物語。
そして、それは私達にも存在するの。

静寂の深い夜に空を眺めていると、離れている人達とも繋がってるような気がして、安心する。
この星々の中で金色に輝く月は、みんなが同じ月を眺めているのだと。
そして空想の生き物達は、この果てしない宇宙のどこかの星に本当に存在してるかもしれない。なんて思いを馳せてみたり。
絶対に行くことの世界達だけど、ほんのちょっとだけ、本当にわずかに、私にも不思議な新しい世界が訪れるかな?そう、もしかしたら…なんて。
だけど、

… … …
聞いて欲しいお話があります。
空に光る星々が流れおちる夜。流星群の夜です。
私には、そのわずかな光りがいつもの日常に隠れて現れ、それが現実になったんです。
その時、ここではない世界に迷い込んだ。ただ今夜の流星群を見に、いつも通りお気に入りの場所へ駆け出していただけ。
テレポートをしたような一瞬の出来事で、景色が一変した。
そこは全部が満天の星々で瞬く世界、指で廻してちょっとだけ神様の気分になるあの天球儀の上に私はいたの。
星々の輝きは手に取れる程とても近くて美しい世界。
そしてそこで、…その夜出会ったのは、……1人の人。瞳に二つの色を持つ不思議な人…。
眼があった後に私はたくさんの光に包まれて、驚いて星々の空間へ堕ちたけど、私を呼ぶ声が聴こえて…。そして、
おぼろげな記憶の中にいるのは、もう1人の人。耳に残ってる優しい声。ぼんやりとだけど、私はその人の姿も記憶に残ってるみたい。でも、とても曖昧。
話をしているような音が遠のいて、そして両手に感じたのは二つの暖かなぬくもりでした。
 
彼等は、誰だったんだろう?私は、知ってるの?
私の中の記憶に問いかけてみても、答えはない。

眼を閉じて、再び開いた時には消えていた。
その世界も。あの人達も。
目覚めたのはベッドの上。夢だったんだと思った。
けど、彼らに触れられた私の両手に残る感覚はとても現実的。柔らかで、優しく、そして安心するぬくもり。
でも、それは夢。現実じゃない。
素敵な素敵な幻。私が1番大好きな物語と同じ世界に行ったとても幸福な夢だったんです。

その夢の続きを見たくて私はその後、すぐに眠ってしまいました。
月明かりが差し込む部屋のベットの上。
もっとまどろんでいたいのに、トリップしたように夜を越えてしまった。
窓から差し込む朝日に無理矢理起こされたみたい。
ああ、とても眠たい。だけど行かなければ。
いつもと同じ朝に、着慣れてきた制服に袖を通して、身支度を整えて玄関の扉を開け放って。

これで私の憧れの世界に迷い込んだ夢のお話はおしまい。

さぁ、
またいつもと同じ日常が始まります。